院長インタビュー
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西武池袋線、ひばりヶ丘駅からほどなく歩くと、大き目の看板がすぐ目に飛び込む。

エントランスでは季節の花がお迎え。室内に一歩はいると、オープンスペースの明るい受付が目に入る。ダークブラウンとグリーンを基調としたシックな空間の「はるクリニック」は、オープン以来、地元住民だけではなく他県の患者さんも訪れる糖尿病専門医のいる内科クリニックとして高い評価を得ている。同クリニックは、糖尿病や脂質異常症、生活習慣病を専門とするクリニックで、とりわけ糖尿病・糖尿病による合併症の治療に力を入れている。糖尿病専門医としての高い技量と知識を持ちながら、患者目線にたった診療を行うことモットーとしている。

「ひとりひとりの患者さまに少しでも長く、中断することなく糖尿病治療を続ける手伝いをしたい」と語る岩﨑院長の、患者・医療への真摯な姿勢に感じ入る取材となった。

少しでも治療を中断してほしくない

はるクリニックの特色を教えてください

  • はるクリニックの特色を教えてください

    はるクリニックの特色を教えてください

    糖尿病の患者さまが、半数を占めるクリニックです。紹介や口コミで、毎月30~40人ほど新しい患者様が来院します。

    糖尿病の治療にはしっかりした目標をたて、わかりやすい説明といろんな角度から検査をおこない、確実によい血糖コントロールに導きます。患者さまにあった方法で中断することなく、少しでも長く糖尿病治療を続けられるよう支援します。

具体的にはどういうふうにおこなうのですか?

まず糖尿病はどこの臓器が、どんな原因で悪くなっているのか、どういう治療をするのか、そしてどのように進行していくのかを患者さまに説明します。治療の第1歩は正しい糖尿病の知識を患者様がもつこと、その説明には十分な時間をさいています。そして1型、2型糖尿病の鑑別診断と、病気の進行の程度を検査し、薬物治療がすぐ必要な場合とそうでない場合を判断します。

緊急性がない場合は、以下の手順で診療をすすめます。

糖尿病を「自己管理」するスキルを医師、看護師、管理栄養士らが指導します。食事療法、運動療法、自己血糖測定や体重測定、万歩計、糖尿病連携手帳の使い方、他科受診の仕方などです。そして治療目標値を設定します。基本的に合併症を予防するためにはHbA1c7.0%未満を目指すようにします。しかし、高齢者になって糖尿病を発症した場合と、青壮年発症の糖尿病の場合では、目標値が異なります。罹病期間の長短、現在のADLも考慮しなければいけません。したがって目標HbA1cは患者さまにより6.0~8.0%の幅があります。

また2型糖尿病の場合、初診時にすでに網膜症、腎症、神経障害および動脈硬化などの合併症を認める場合が少なくありません。それら合併症の有無をすべてチェックします。

  • 具体的にはどういうふうにおこなうのですか?

    具体的にはどういうふうにおこなうのですか?

    月1回の診察の時は、当日の血糖値、HbA1c値を迅速検査して説明します。管理栄養士が定期的に献立チェックや食事アドバイスを行います。2~3か月経過を見て、上手に血糖コントロールができない場合、薬物療法が追加になります。
    薬物療法を始める場合は、空腹時血糖値と食後血糖値、肥満の程度、年齢、合併症の程度、生活リズムなどを考慮して少量から開始します。もちろん薬物のメリットと副作用については十分な説明が必要です。現在は多種類の糖尿病薬があり、新薬もたくさんあります。

― 内服薬以外に注射薬があるのですよね ―

注射薬には「インスリン」と「GLP-1受容体作動薬」という新しい作用機序の製剤の2種類があります。インスリンは1番確実に血糖値をコントロールする方法です。インスリンの種類は主に作用時間によって分けられます。もっとも短いもので2時間から、最長42時間まで持続するものがあります。注入器はペン型で扱いやすく、注射針は32Gという細さですから痛みはほとんどありません。

GLP-1受容体作動薬は、血糖値を低下させる以外に食欲を抑制し体重を減らす効果があります。インスリンと違って、高血糖の時だけ作用するため、単独投与では低血糖がおこりません。この注射はインスリン分泌能がまだ残っている、2型糖尿病にしか使えません。 いずれの場合も、患者様に自宅で簡易型血糖測定器をつかって、血糖値をモニタリングしてもらいます。そうすることで低血糖を知ったり、逆に血糖値が高い場合の原因を知ったりすることができ、今後の厳格な血糖コントロールに有用です。また診察の時、簡易型血糖測定器をPCにつないで結果を分析します。

どういう人がインスリン治療になるのですか?

糖尿病早期でもインスリン治療が必要になる場合あります。たとえば、若年の肥満男性に多い清涼飲料水ケトーシスや、重篤な感染症や手術を行う場合などです。通常は、血糖値が下がって「糖毒性」がとれると、インスリン療法をやめられます。この「糖毒性」の解除を目的に、2型糖尿病でも短期インスリン治療を行う場合もあります。数か月で膵臓の機能が回復して、その後内服薬にきりかえても、うまくいくようになります。また他の病気の治療でステロイドを内服している場合にもインスリン治療が必要です。

もっとも多いのは慢性期2型糖尿病でインスリンが必要になる場合です。つまり、罹病歴が長く、自己のインスリン分泌が著しく低下し、血糖コントロール不良になったときインスリン治療が必要になります。特にSU薬と呼ばれる内服薬を長期服用すると、2次無効になりインスリンに切り替えなければいけません。やせ型で栄養不良の場合もインスリン療法に切り替えた方がベターです。

総合病院との違いは?

なるべく患者さまを待たせないシステムですね。
最大でも待ち時間は30分以内くらいです。

― すごく早いですね ―

予約制を徹底しています。もちろん、今日急に具合が悪くなったから診察希望、という人のための予備枠は設けております。
また、当院は医師が一人なので、大病院のように担当医がよく変わるということもありません。設備の面でいえば、CTやMRIのような装置はありませんが、ほとんどの糖尿病による合併症の検査は当院で可能です。必要であれば、連携医療機関に検査の依頼もしています。

また、病診連携には力を入れています。例えば眼科、循環器科、泌尿器科など専門の違う病気で他医に通院していて、糖尿病の管理は当院でおこなうという患者さまは多数いらっしゃいます。その際、糖尿病連携手帳でお互いに病状を報告しあったり、連絡帳として活用しています。

合併症の検査はどのようにするのですか?

「腎症」の検査は、GFRと尿中微量アルブミンを測定します。腎症はステージ1~5に分類され、ステージ1は正常でステージ5は血液透析です。ステージ4以上になると腎臓内科の受診が必要になります。

「神経障害」の検査としてアキレス腱反射、振動覚検査を診察室で行います。
「動脈硬化」の検査は、心電図、足関節/上肢血圧(ABI)、脈波伝播速度(CAVI)、血管内皮機能検査(FMD)など患者に応じて検査します。虚血性心疾患が疑われる場合、循環器科に紹介します。
「網膜症」は眼科医に依頼します。糖尿病連携手帳を必ずもって受診していただきます。眼科には年1~2回受診を促します。

「歯周病」は歯科医に依頼します。糖尿病連携手帳を必ずもって受診していただきます。たとえ虫歯にならなくても歯周病は必ずと言っていいほど発症します。歯周病を放っておくと血糖値が悪化します。また血糖値が高いときほど、歯周病が進みます。従って歯周病治療はとても大切です。

合併症ができないようにするにはどうしたらいいのですか?

  • 合併症ができないようにするにはどうしたらいいのですか?

    合併症ができないようにするにはどうしたらいいのですか?

    長期に糖尿病にかかっていると、ほとんどの患者さまが脂質代謝異常や高血圧症を併発してきます。糖尿病、高血圧、脂質異常症などが影響して全身の血管や眼、腎臓、神経などが変性し機能障害をおこします。

    具体的には心筋梗塞や脳血管障害、末梢動脈閉塞、視力喪失、人工透析、足壊疽などです。後遺症で日常の生活の質を低下させたり、生命予後も不良になりかねません。

それらを予防するには、糖尿病の早期発見と、適切かつ継続的な治療をするしかありません。また、血糖コントロールのみならず体重、血圧、血中脂質の改善や、禁煙、節酒などの生活習慣の是正が重要です。

いったん血糖値が下がったからとか、血圧が正常になったからといって、通院を中断してしまうと、必ず合併症が進行します。薬を飲む、飲まないは関係なく、定期検査だけは続けてほしいと思います。当院に来られなくなっても、どこかで通院を続けてくださればいいのです。